02.異変「セラウド様!!」 気が動転したような大声をあげる見張り兵とは対照的に、 長身の男は落ち着き払った低い声でこたえた。 「どうした?」 「し、神殿からっ・・・光が!!」 「光・・・?」 「突然、凄まじい量の白い光が神殿から光の柱のように現れて!!すぐに消えたのです!」 「光の・・・柱・・・?」 セラウドと呼ばれたその男は、常に柔らかなその眼差しを突如、険しいものに変えた。 「何かが、起こる。」 吸い込まれるような濃い灰色の瞳が、窓の外に見える神殿の一角をじっと見つめていた。 ぴちょん。 頬の上に垂れた水滴のあまりの冷たさに柚有は目を開けた。 ――・・・・・・。 自分が今いる場所は、どこなのかまったくわからない。 まわりは薄暗く、見渡してみると荘厳な柱が何本もたっている。 「ここ・・・どこ。」 夢でも見ているのだ。そう、思った。 私は自分の部屋にいたはず。きっと眠ってしまったに違いない。 動揺を隠せない自分を一生懸命納得させる。 意識を覚醒させるように、一度大きく深呼吸すると 柚有は自分の手にしっかりと銀の笛が握られていることに、ここではじめて気づいた。 「フルート・・・。」 これはきっと夢なのだから。 夢の中で、これは夢なのだと認識しているらしい柚有は自分が可笑しくも思えたけれど。 私がそう願えば、この吹きなれた相棒は、無条件で極上の音色をくれるに違いない。 そう考えて、なかば無意識に、小さな穴の手前に唇をあてがう。 そして期待しながら始めの一音を奏でると 変化は、起こった。 突然前方に、眩しい光が現れたのだ。 柚有は驚いて、とっさにフルートを吹くのをやめた。 すると、そうするのが合図でもあったかのように光も途端に消える。 「・・・・・・。」 絶句する柚有が光があった場所に次に見たものは、 とっさには男性とも女性ともつかない、しかしたとえようもないほどの美しい顔立ちと さきほどの光を映しているような美しい銀白の髪をもった、人だった。 前へ indexへ 次へ