冬、降る雪のしずけさに





「さむ・・・。」

「しばらく待ちたいって言ったのは誰だ?」

白い目でそう言ってやると、寒さで赤くなった頬が軽くふくらんだ。

「だって寒いもんは寒い。」

「まあ、な。」

2人して見上げた空はどんよりと低くたれこめている。
天気予報のお姉さんが言った通り、雪は降るのだろうか。

「アイツも寒いのかな?」

「土の中って案外あったかいらしいぞ。」

無言で繰り出されたパンチを潔く、わき腹に受け止める。

「いてーよ。」

「自業自得。もう少し繊細になんなさい。

 だから彼女の1人も出来ないんだよ――」



彼女、ね。

それはもう、母親の小言のごとく繰り返されているセリフ。

寒さに縮こまっている、いまや相方とでも言うべき女を横目でみた。

俺との間隔、およそ1メートル半。

その隙間は誰かの指定席のように、いつだって変わらず保たれる。


埋まることは、ない。




「絶対に変わんないの?」

思わず声になってしまった言葉は、少々情けなく響いたと思う。



「絶対に変わらないものなんて、あるの?」


「・・・・・・。」


俺の心中など知らないはずが、返ってきた言葉は見事に心を貫いた。

さすが、相方。

「何、どうかしたの?」

「別に。」

寒さでこわばっていた顔が緩んでいくのがわかった。

「気持ち悪い。」

容赦ない言葉とは裏腹に、あきれたような笑顔がこぼれる。



その時、目の前で白い粉が舞っていった。


「あ、ゆき。」

「えっ?」

「いや、雪。」

「・・・ホントだ。」



悪い冗談のようになってしまった一連の会話に、2人揃って吹きだす。


初雪を今年もまた、この場所で並んで見られた。


そのことが今の俺たちの答えだろう。












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